霜月 朔(創作)

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足音



傷付いた心を抱え、
一人、空を仰ぐ。
もう戻らない過ぎた日に、
想いを馳せる。

俺の中で、色褪せない、
大切な想い出。
毎日の様に聞いた、
まだ、幼かった君が、
一生懸命俺を追い掛けてくる、
小さな小さな足音。

小さな君の足音は、
次第に大きく、
ゆっくりになって。
俺を追い掛けていた君は、
少しずつ大きくなった。

いつかきっと。
大人になった君と、
並んで歩ける日が来ると、
俺は勝手に夢見てた。

でも。
俺の心が、闇に囚われ、
立ち止まっている間に、
君はずっと先に行ってしまった。

俺が漸く目を開けた時。
笑顔の君の周りには、
たくさんの仲間が居て、
微笑む君の隣には、
俺の知らない男が居た。

君は、俺の知らない所まで、
歩いて行ってしまった。
幸せそうな君を、
俺は見送る事しか、
出来ないんだね。

…もう。
君の足音は、聞こえない。
…もう二度と。


8/19/2025, 6:45:58 AM