anonym

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さよならを言う前に、ふと浮かんでしまった。ずっと昔からそばに居た君を、これから会うこともないだろう君の記憶にどうやったら残れるのか。けれど生憎それを発する勇気はなかった。でも君に傷を負わせたい。ならば、と誘導した。
「いつまでも捨てられないもの、ってある?」
君が答えられないのは知っているし、逆に質問で返して来るのも知っていた。ようやく捨てようとしているから秘密、と返せば黙り込む。多分、それは君の目の前にいる奴のことだろう?最初に質問を投げかけた、ずっとそばに居た奴。君が恋人を作れないのはきっとそいつのせいで、心のどこかで鬱陶しく思ってるんだろう?……なんて、自分で自分を悪く言うのはちょっとしんどいけれど。けれどもう会うことも無いこの機会に君に出来うる限りの傷を与えたかった。何度恋人を作って変えても顔色ひとつ変えず嫉妬もしない君が恨めしかった。こんなにも好きなのに、君はその感情を抱いてくれていない、と。
「いつまでも捨てられないものを捨てるためにここにいるんだ」
「好きだよ。ずっと前から」
君に精一杯の感情をぶつけよう。ちょっとでも傷が付いて、少しでも記憶に残り続けてくれればいい。

さよならを言う前に、君を呪おうと思う。



[さよならを言う前に]

8/20/2022, 12:29:28 PM