死にたい少年と、その相棒

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  /エイプリルフール

「そんな君が、大好きだよ!」

執務室に来た彼へ、勇気を振り絞って言ったのに、彼はちらりともこっちを向かず、一言も話そうとしなかった。
「ねぇ、君が好きなんだよ?聞いてる?」
「下らねぇ嘘ついてねぇで仕事しろ」
「なんで嘘なのさ」
そう言うと彼がカレンダーを指さした。
昨日とは違った絵柄のカレンダーの今日の日付には「エイプリルフール」の文字。

「手前にしちゃ適当な嘘だったな」
そう言い捨てた彼を睨む。机に突っ伏しながら彼の肩を叩いて時計を指さす。
時間は昼を回ってる。
「嘘をついていいのは午前中までなんだよ?」
「だから?日頃毎日、息を吐くように嘘をついてるだろ」
そんな一言に目を丸くして、伏せる。
人差し指でテーブルを撫でれば書類で頭を叩かれた。
「いいから仕事しろ」
「やる気出ない」
「飯奢ってやるから」
ちらりと彼を見た。

「……やだ。やりたくない」
五秒ちょうど眺めて子供のように机に突っ伏して首を振った。今日は、押せばもう少しいけそうだ。
「わぁった!飯作ってやるから」
「和食?」
「分かったから」
「……じゃあやる」
「ん、頑張れ」
想像よりずっと、優しい声が聞こえてきた。

「嘘じゃないよね……?」
「午前中しか嘘つけねぇんだろ」

4/1/2023, 10:35:06 AM