「あったか〜い」
駅のホーム。自動販売機のボタンを押した。
「オレはレモンティーだな。ユミは?」
「私はホットココア」
熱いぐらいのペットボトルのフタをあけ、ゴクッとひと口飲んだ。
雪が降ってきた。
「寒いね」
彼がぴったりくっついて来た。ほのかに香る紅茶の香り。見上げて笑いあった。
風が強く吹いた。彼の制服のネクタイに雪がついて、手袋をしたままの手で払ってあげた。
「あ、ありがとう」
「ダウン、前、閉めたら?」
「だな」
寒いはずなのに、温かかった。
――ずっと続くと思っていた。
「何がいい?」
「うーん、私はココア」
「じゃ、オレはコーヒー」
「あ、やっぱりレモンティーにする……」
思い出したくなった……冬の香り。
10/27/2024, 12:38:54 PM