飛花

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『ごめんなさい、わたしもう帰らないといけないの……!』
 そう言いながら王子様の手を離して、出口を真っ先に見つけて駆けた───────

「お前、なんで舞踏会にいたんだ?」
 継母は言った。わたしは城を出る前に12時の魔法が解けて、その瞬間を義姉に見つかってしまった。
「部屋の掃除と皿洗いを命じただろ。何勝手に舞踏会行ってんだよ」
 ごめんなさい、としか言いようがない。いくら舞踏会に行きたかったとはいえ、仕事はきちんと済ましておくべきだった。いや、義姉に見つかってはならなかった。
 とその時、コンコンとノックの音がした。聞くに、その舞踏会で靴を落とした人を探しているらしい。その靴の持ち主が、王子様のお気に入りの人だと。
「履いてみてもいいかしら?」
 義姉は言う。
「いや履かなくても分かります。あなたの家で最後なので」
 義姉の顔が明るくなった。わたしの顔は絶望に染まった。






#ベルの音

12/21/2023, 2:19:51 AM