幸太郎

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河川敷を散歩していると、
小さな女の子がタンポポの綿毛を
必死で飛ばそうとしていた。
口が小さくてまだ上手く息を吹きかけられないのか、なかなか上手く飛ばない。
隣のお婆さんが微笑ましそうな面持ちで
「どれどれ、かしてごらん」
と、いうように女の子からタンポポを受け取った。
お婆さんは思いっきり鼻から息を吸った。
と同時に咳込み倒れた。
私は驚いて駆け寄った。
どうやら綿毛が鼻に入ったらしい。
女の子は状況が分からないのか、
呆然と立っている。
私はお婆さんの背中をさすった。
少しして、お婆さんの鼻から1本の綿毛が風に乗って飛んでいった。

それから私はタンポポを見ると
あの頃の女の子が
「綿毛の飛ばし方」にトラウマを抱えていないだろうかといささか不安を感じる。

4/29/2024, 1:34:00 PM