G14

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ひどく気が重い。
なぜなら、今から世界で一番愛している彼女が遠くに行ってしまうからだ。
「電車出るからもう行くね」
向こうに行こうとする彼女の手を取る。
「離れたくない」
「でも、仕方のないことなの」
彼女は呆れたように笑う。
「君を一人にするのは不安なんだ」
「大丈夫よ。みんないい人だから」
今度は僕を諭すように笑う。
「でも君にさみしい思いをさせるわけには‥」
「ハイハイ、分かったから。じゃあもう電車出るから」
そう言って、簡単に僕の手を振り解き、さっさと駅の改札口に向かっていってしまった。
そっけない。彼女は僕に未練はないのだろうか。
やはり、もう一度話合うべきでは?
考え事をしていると、彼女が踵を返して戻ってくるのに気がついた。
何事かとかと思っていると、
「ごめん忘れてた」
そう言って、僕のほっぺたにキスをする。
「行ってきますのちゅー。晩ごはん期待してるからね」

9/28/2023, 1:21:41 PM