「柔らかい雨」
柔らかな優しい雨が降る夕方に僕は誰にも見つからないように、家から飛び出した。
スマホも財布も何も持たず、走り続けた。
何処までも行ける気がした。
とにかく走って走って走った。
何時間走っただろうか、私は1人路地裏に立っていた。
さっきまでの優しい雨とは裏腹に、夜になると、大雨になった。風はビュンビュンなり、雨はザアザア降る。
勿論、着替えも羽織も持ってきていない。
1人、体育座りをして朝を待つ。
そんな途方に暮れていた矢先、誰かが傘を差し出し、雨を遮ってくれた。
顔をゆっくりあげると、お兄さんがしゃかんでいた。
「大丈夫かい?寒いだろう」
と心配げな顔をし、お兄さんは着ていたパーカーを私に貸してくれた。
そしてバックを漁り、お茶の入ったペッドボトルも差し出してくれた。
「ありがとうございます…!」
温かかった。
先ほどとは嘘と思えるほど優しい雨が降り注いだ。
わたしの頬に雫が落ちる。
その瞬間、わたしは貴方に恋をした。
11/6/2024, 2:14:47 PM