その石は、ひんやりひんやりと、判断力を吸い続けていた。
判断力を、遠慮していた心を、臆病な気持ちを、倫理観を、その石は静かに静かに吸い続けている。
石の奥、一番奥の芯は青く深く、ひたすら渦を巻く青が広がっている。
深い、深い青が、手の中に収まるくらいわずかな石の中に閉じ込められている。
これは永遠の幸せなのです。
誰かが言った。
その石は、青く深く、深海のように澱めきながら、青く、深く、輝いていた。
光を、日光を、色を吸い込むような青く深い闇で、強い決意を、体温を、吐き出しながら、青く深く輝いていた。
青く深く、ドクドクと脈打つ。
この石は確かに、永遠の幸せだった。
この石のために、大人になってまで私をイビリに現れた、学生時代のいじめっ子の友人を、バラバラにして鞄に詰めた。
あの薬と出会わせてくれたのもこの石だった。
青く深く脈打つ。
この石は、私に青く深く脈打つ幸せを届けてくれた。
殺しはまだバレていない。
薬もまだバレていない。
石のもたらす幸せも、誰にもバレていない。
私は自由だ。
石のおかげで、罪悪感や恐怖や毎日の悪夢と引き換えに、自由と幸せを手に入れたのだった。
今でも、犯罪がバレる悪夢は見る。
石を失い、元の生活に戻ってしまった悪夢を見る。
しかし、夢は所詮夢だ。
最近は朝が待ち遠しい。
夢から覚めれば、私は自由でそして、幸せだ。
石は深海を思わせるように青く深く脈打っている。
鮮やかに、深く、青く。
私は石を握りしめる。
私の中に幸せが、青く深く脈打つ。
6/29/2025, 10:16:10 PM