水晶

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『新年』

年が開け、今日はお父さんお母さんと一緒にお寺さんへ新年のご挨拶にやって来た。他の檀家さんが数人、向こうでお参りをしているのが見える。挨拶を終えて本堂へ行くと、お参りを終えた檀家さん達と廊下ですれ違った。

ガランと広い本堂にたった3人。誰も居なくなったね…と小声で喋りながら家の位牌が置いてある一番近くのロウソクに火を灯し線香をあげる。
『おじいちゃん、新しい年になりました。
今年も皆無事に過ごせるように見守ってください』
そう心で唱えると、風も無いのに目の前の炎がユラユラと揺らめいた。

『あ、おじいちゃんだ』
お父さんとお母さんは気付かない。けど私には分かる、おじいちゃんが合図を送ってくれたこと。
向こうでお父さんがそろそろ帰るよと呼んでいる。
じゃあおじいちゃん、もう行くねと囁くと、それに応えるようにロウソクは一瞬ボワッと炎を大きくすると、その後静かに消えていった。

1/1/2025, 1:24:22 PM