少ない荷物と
歩きやすい服装。
身軽な旅は
私の足を自然と動かしてくれる。
何年か前に
自分に合わないと思い
家族や愛猫すらも置いて
一人で旅に出た。
猛暑の夏も、吹雪の冬も
ずっと歩いた。
都会の明かりは眩しすぎるから田舎道を。
旅の途中、
ふと夜を感じたくなる。
眠いのに眠れず
昔のことを思い出して
もう帰りたくないなーとか
もう帰れないかもなーとか。
ちょっとずつ私の首を締めていって
夜に飲み込まれる。
月みたいな太陽を見たその日の夜も
そんな、
いつもと変わらない嫌いな夜だった。
喉が乾いて、水を飲んで
寝付けなくて外に出た時に
完美さんに出会った。
ツインテールに花の髪飾りをつけ、
紫と黒の服を着た不思議な少女だった。
吸い込まれるような瞳を見ていると
夜が嫌いなんですか?と聞かれた。
そうなんです、と答えると
私も嫌いだったんです。
でも私の友だちは夜が好きで、
私も好きになったんです。
何故友達が夜が好きだと好きになるのか
詳しく聞かせてもらった。
そしたら私も夜が好きになりそうになった。
私の友だちは
私のことをある事から逃がしてくれて、
それでも私も友だちも
記憶喪失になったんですけど、
全身に火傷を負って
記憶がお互い戻っても
何事も無かったかのように
友だちは友だちでいてくれて、
本当にあの時はヒーローみたいでした。
それで、
友だちが助けてくれたのが夜だったんです。
火を振り回すやつらが見やすくていいって。
でも後から
友だちがただ怖いだけで無計画だったことを知って
みんな同じで
怖いものは怖いんだって思うと
なんだか夜が好きになったんです。
丁寧な話し方をする完美さんは
ポケットから金色の鍵を取り出して
私に手渡した。
何の鍵か聞くと
夜が好きになる鍵なんだと。
"Good Midnight!"
少ない荷物に
小さい荷物がまた増えたなーと
整理がめんどくさく思えたが、
何かに当たる度にカチャリと音がすると
早く夜になってみてほしい、
金色の月が浮かぶ夜が好きになった。
1/31/2025, 5:25:27 PM