「 わぁ! 」
春の柔らかい陽射しが降り注ぐ庭で、吹雪と時行はのんびりと座っていた。
時行は満開の桜を見上げながら、手元の茶菓子を口に運ぶ。吹雪は隣で小さな木の枝を手にして、何かをいじっていた。
「吹雪、それ何やってるんだ?」
時行がのんびりと聞くと、吹雪は視線を枝から少しだけ離した。
“…まぁ、少し…。……あと 少し黙っててください”
「え、なにそれ酷くないか!?」
時行がぷくっと頬を膨らませるが、吹雪は小さく笑っただけで作業を続けた。
“すぐ分かりますよ、……ほら、できた。”
吹雪は小さな枝細工を時行の手にそっと置いた。それは桜の花びらを模した簡単な木彫りだったが、どこか温かさが感じられる。
「わぁ! これ、凄くかわいいな!」
時行が目を輝かせて笑顔を見せると、吹雪は少し照れたように肩をすくめた。
“簡単なものです、我が君が桜好きそうだったので”
「いやいや、こんな細かいの私には絶対無理だよ。吹雪ってこういうの得意だよな。…なんかすごいなぁ」
時行は手のひらでそっと木彫りを撫でながら、ふと隣の吹雪をじっと見た。
「……なんか、吹雪がそばにいると、私、毎日『わぁ!』ってなるよ」
“……急になんですか、それ。”
吹雪は驚いたような顔をして振り向くが、時行はにこにこと笑っている。
「だって、吹雪って不器用そうに見えて、ほんとは凄く優しいし、すごい器用だし。こうやって私のこと喜ばせてくれるし…」
吹雪は一瞬黙って時行の顔を見つめた後、ふっと小さく息をついた。
“それは、、我が君がよく笑うからです。自分もつい、そうしたくなります”
その言葉に、時行は「えへへ」と満足そうに笑った。
「じゃあ、私も吹雪に 『わぁ』 って思わせられるようになりたいな。いつかきっと、私もやるよ!」
“我が君が 『わぁ』 って思わせてくれるの、自分もわかってましたけどね。”
吹雪が少し照れたように呟くと、時行はさらに嬉しそうに声をあげた。
桜の花びらが風に乗って二人の間に舞い落ちる中、二人は変わらず穏やかな笑顔を浮かべていた。
「 わぁ! 」
1/26/2025, 7:29:29 PM