みーみる

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透明な小瓶に入ったカラフルな飴を、そっと朝日の当たる出窓に置いてみた。
まだ春の優しい光に照らされて、瓶の中の飴がキラキラと輝やいている。
瓶の中に入った飴は、ビー玉よりはちょっと小ぶりのサイズなので、噛めばすぐ口の中で無くなるだろう。
赤い玉はいちご。黄色はレモン。緑はメロン。水色は…ソーダかな?
子供の頃から何度も食べている馴染みの味で、
今、食べなくてもだいたいわかる。
私が幼い時にはこの飴たちも、幸せをくれるのに十分なお菓子だったけれど、大人になった今では、どの色を食べても同じ味だと感じてしまう。
練り込まれた香料と、舌にとろりと残る甘い水飴の感触。
そんな色と香りをつけただけの砂糖の塊を食べるなら、体重が気になる大人になった今では、ちょっとお高いチョコレートでも口に放り込みたいのだ。
今となっては、瓶に入った飴は、こうして窓辺において、キラキラ輝くのを眺める為のもの。
まばゆい朝日に照らされたカラフルな飴たちは、今日1日を応援してくれるかのようで、毎週月曜日の朝は、こうして飴の入った小瓶を出窓に置いて、輝く瓶に入った飴を眺めながら食後の紅茶を飲んで一息つくのがここ最近の日課になった。
私は紅茶を飲み干すと、時計を見た。
午前6時半。そろそろ出勤の時間だ。
先月から新しく配属された後輩たちの面倒を見ている。
彼女たちをみると、まるでこの瓶に入った飴のように見える。
私も入社したての4年前はそうだったのだろうか。
毎日毎日同じことの繰り返しで、全てのことが段々と色褪せてきてる気がする自分は、週初めの月曜日、こうしてこの朝日に輝く飴をぼんやりと眺めてるだけで、なんでだか元気が出てくるのだ。
単純な性格の私の、安上がりな癒しの時間。
でも、カラフルな飴の小瓶の効果は絶大なのだ。
今朝もキラキラ光る飴の応援を貰って、さぁ、今週も頑張っていこう!
私は出窓に置いた飴の小瓶を白い棚に並べ直してから、通勤用のバックを手にとった。
今週も元気良く、いつもの会社に向かうために。

5/2/2024, 9:29:44 AM