喜村

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 何を悩んでいるの。
悩むより行動したほうが楽でしょう?

 そんな言葉を思い出して、俺は新たな人生をスタートさせようと決断した。

 早朝5時の始発電車に乗り込む。
 何度かの乗り換えの後、10時くらいに君の前に立つ。
 梅雨時期の息苦しさがある空気だ。

「あれ、ハラダじゃん、どうしたの?」

 あなたは俺の姿に気付いた。
 上京した先輩、スーツ姿で会社の受付嬢をしている、優しくて美人な俺の先輩。

「来年、俺、学校卒業するから、結婚してください!」
間髪入れずに頭を下げる
「結婚の予約! 離れたくない!」
「え、仕事中にそれ言われてもなんだけど」

 俺は頭を下げたままなので、あなたの表情はわからないが、声色だけは呆れたものだった。
 しばらくの沈黙の後、下げた頭をあなたはポンポンと撫でる。

「悩んでたから行動してくれたのかな? 分かったよ」

 それから俺の人生は、彩りのあるものとなったのは、言うまでもない。
 あなたがいたから、今の幸せな俺があるのだ。
 雨が上がった空気は、汚れがなく綺麗だった。



【あなたがいたから】

@ma_su0v0

6/21/2024, 12:48:00 AM