みーみる

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 恋というものは、幾つになっても訪れるものだけれども、それが初めて、というのは本当に特別な時間なんだ。



 今年4月に高校に入学し、晴れて高校生活を始めてみると、僕の中学からの友人たちは、ちらほらと新しい恋を始めていた。

 彼らの話をよくよく聞いてみると、どうやら異性と恋に落ちた、いうよりも、恋に憧れて自分と一緒に恋を育んでくれる女の子と、とりあえず付き合い始めた、といったところなのか。

 入学して1ヶ月経つが、もう数組が別れてしまったようだった。

 僕も、女の子に興味がないわけではない。

 自分の隣で、自分の話に相槌を打って頷づいたり、笑ったりして、私たちだけの絆、大事にしようね!みたい優しく微笑みをかけてくれる女の子がいたら、それはもうhappyだけしかない毎日になるだろう、という事ぐらいは容易に想像がつく。

 でもそれは、

『恋人』

 というお互いの暗黙の了解の中の、

『契約』

 …みたいなもので得られる

『安心』 というか…


 …幸せなわけで。

 
 育てていく恋、というものなんだろう。

 
 初恋は

 
 恋をしようと思ってなかったのに、落ちてしまう恋…。



 初めての恋は、きっと誰もがそんな恋なのではないだろうか。





ずうっと昔、まだほんとに小さかった頃。
  
 その女の子を見ただけで、ほかの何もかもが見えなくなる程の衝撃を受けたことがあった。

 
 僕がまだほんとに小さかった頃。

 幼稚園入学式。

 色鮮やかな桜が咲き乱れ、花びらが風に待っている中、その女の子は門の前に立っていた。

 その日は強い風が吹き、風に煽られて桜が大きく揺れていて、満開の桜の花から離れた小さな花びらが、たくさん宙に舞っていた。

 女の子は、その大きく風に揺れる満開の桜たちを、口をぽかんと開けながら、でも嬉しそうに見つめていたんだ。

 今考えてみれば、大きく揺れる美しい満開の桜と、風に舞う無数の花びら。

 そんなシチュエーションの中で佇む同じ年頃の女の子を見たのだから、僕の中に強烈な印象を与えたのだろう。

 初恋は叶わないというけれど、実際僕の初恋は、ほんの一瞬で終わった。

 何故なら、僕は入学した翌日から、狭い幼稚園の中をキョロキョロしながらその桜の女の子を探した。

 けれど、不思議なことにその女の子はどこにもいなくて、2年通った幼稚園だったけれど、その後、一度も会う機会が無かったのだ。



 夢でもみていたのだろうか。

 桜の妖精だったのかな…

 

 真実はわからないけれど、今考えてみれば、あの瞬間。

 あの日が間違いなく、僕の初恋の日なんだ。




 

5/8/2024, 9:36:51 AM