「落下といえば」
「おばあちゃんのお兄さんが亡くなったんだって」
母がまことに言った。
「へえ」
身内の訃報を聞いた返答として、あまりにも軽いかもしれない。
しかしまことにとって、会ったこともない親戚というのは他人と同義だ。
面識のない相手の死を悲しむことは困難すぎる。
そもそも、祖母に兄がいることすら、訃報を聞く今の今まで知らなかったのだから。
「蜘蛛膜下出血で亡くなったんだって」
「へえ」
心臓発作とか、脳出血とかもだけど、そういう突発的な病気で死ぬのは嫌だっただろうな。
死ぬまでの準備ができないから。
大切な人に別れの言葉を言うとか、最後の晩餐として好物を食べるとか、死ぬまでにやっておきたかったことに挑戦するとか。
病気は病気でも、突発的に死ぬものでなければ、できることは多いだろう。
自殺なら、自分で死ぬタイミングを決めるわけだから、当然死ぬ準備も自分のペースでできるし。
ふと、まことは、考える。
もし自分が死ぬなら、どんな死に方をしたいか。
答えは、飛び降り自殺だ。
理由は簡単で、高いところから飛び降りると気持ちよさそうだから。
デメリットとして、まことが飛び降りた後、周囲の人が迷惑を被ってしまうことが挙げられる。
だが、死ぬ時ぐらい、人の迷惑考えなくて良くないか?
線路に飛び出すとかはさ、結構な人数だけど、ビルからの飛び降り自殺とかなら、そこまででしょ。
6/18/2024, 6:33:55 PM