死にたい少年と、その相棒

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  /春爛漫

暖かい日差しを受けてくしゃみをした。
穏やかな時間は久しぶりだった。

君に言われて、引っ張り出されるようにして遠出させられたが、うん。これは案外悪くない。

「ねぇ、どうして急に遠出なの」
「手前が部屋に籠って自殺ばっかしてるからだろ」
「いつもの事じゃないか」
そう言って遠くを眺める。色とりどりの花が咲き、川は陽の光を浴びて輝いている。
春爛漫とはこのことを言うのだろうと思った。

「死にたいなぁ」
ぼんやりと呟いた。
「殺してやろうか?」
君が言ったから、遠くを眺めながら返事をした。
「君に殺されるのは嫌」
「わがままなやつ」
君が呆れた声でそう言った。

またくしゃみが出た。
この綺麗な景色が人生最後の景色なら、きっと素敵な"死"なんだろうなぁ。

4/10/2023, 10:57:27 AM