「ごめんね」
新幹線で。
ひとりのおばあちゃんが隣りに座った。発車してすぐ、袋からお弁当を広げた。お寿司だ。
新幹線での食べ物の匂いは時折話題になる。隣の席でまさにそれを実感していた。
そんなことを思っていると、割り箸を割ったおばあちゃんが僕に、
「ごめんね、わたしイクラ苦手だから食べてくれる?」と言ってイクラの軍艦を箸で挟んで渡してきた。
びっくりしたけど、じゃあいただきますと言って食べた。
その後はひと言も会話をすることなく、おばあちゃんはお寿司を完食し、すぐにお昼寝してしまった。
僕は一駅先に下車した。おばあちゃん、寝過ごさないかな、とちょっと心配になったけど、初対面の人にお寿司を一貫だけ食べさせるメンタルの持ち主なら、きっと大丈夫だろうと思いながら改札を出た。
なかなかの印象深い一日だった。
5/29/2024, 10:05:33 PM