恋人と一緒に住むために引越しをしている時、荷物のはしに小さなノートが出てきた。
少し色褪せているけど綺麗な形をした水色のノート。
俺と恋人が好きな水色。
俺に記憶がないものだから、きっと彼女のだ。
そう思って彼女の元へ持って行った。
「ねえねえ、このノートは君のであってる?」
何気なくそう伝えたけれど、そのノートを見た彼女の表情は固くて胸がチクリとした。
「あ、ありがとうございます」
どこか不安を隠したまま、ノートを受け取る。
そして寂しそうな目をしたまま、ノートを抱きしめた。
「大事なもの?」
すると首を横に振った。
「私には、もういらないもの……です」
ゆっくり俺を見つめると彼女は嬉しそうに笑ってくれた。
「あなたがいてくれるなら、もう大丈夫なノートです」
その笑顔は晴れやか、とは言えないものだった。
安心を滲ませた表情でホッとしたけど、彼女を抱きしめたくなって強く抱き締める。
「うん。私、もう大丈夫」
その声に力強さを安心して、心の底から嬉しくなった。
おわり
六一二、閉ざされた日記
1/18/2026, 1:45:28 PM