もも

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『君の声がする』

風に運ばれた桜の花びらが足元でダンスをして、再び遠くへ運ばれていく。
俺が花びらのダンスに誘われて視線を上へ向けると、頭上には淡いピンクの空が広がっていた。

満開のさくらに思わず足を止め、ちらちらと舞い落ちる桜をぼーっと眺めながら今ここにいる俺を見たらあいつはどう思うかなんて思う。
クタクタのスーツを着て、夢も生きている意味すらみいだせないまま、ただただ同じ毎日を過ごす俺を。


あの頃は将来はもっと希望に満ちていて、あいつとも頻繁にはあえなくとも、たまに酒を飲みながら愚痴を言いあえる。
そんな腐れ縁が続いていくそう思ったのに、ある日あいつは不慮の事故で俺を置いていった。

『俺めっちゃいい案浮かんだんだ!お前のイラストに大活躍してもらうつもりだから、明日学校で話そうぜ!』


前日にそんなメッセージを貰ったから楽しみにしていたのに、飛び込んできたのはいい案どころか人生最悪のニュース。
あいつ、俺が絵を描くと誰よりも喜んでくれたんだ。
なのに…なのに…。

俺が別の行動をしていたらあいつは救えて、今も元気で俺も、あいつが好きって言っていたイラストも描き続ける事が出来たのだろうか?

そんな事を何度も思ってしまっては、手が震えて褒めてくれた絵すら描けなくて、夢も熱量もない会社で上司にどやされながら同じ作業をやり続けてる。



―――あの日話せなくてごめんな。
俺お前のイラスト世界一だと思ってる!だからさ……もっと俺に見せてくれよ―――


突然の突風。巻き上げられた花弁でピンクで染められた視界の中ふと、声がした気がした

2/16/2025, 7:04:12 AM