一年前に行方不明になった親友から、手紙が来た
住所などは書いてない
直接投函されたのだろう
最初、誰かが酷いいたずらをしたのだと思ったが、とりあえず手紙を開くと、明らかに親友の筆跡で書かれていた
無事だったのか?
なんで今まで連絡をしてこなかった?
僕の自宅に手紙を投函したのに、なぜ僕に会いに来ない?
そんな考えが頭に次々浮かんだが、ともかく内容を読む
それは、到底信じられないような内容だった
『碧人、一年間なんの連絡もできずにすまない
みんな俺を心配し、悲しんでいることだろう
けど、俺は生きているから、その点は安心してくれ
俺は今、別の世界で旅をしている
その旅の途中に寄った神殿で、神様の一柱が俺の故郷の世界へ手紙を送れるっていうもんだから、お前を含む、家族や友人一同に手紙を書いたんだ
俺が異世界に来たのは、どうやら召喚でもなんでもなく、ただの自然現象だったらしい
呆然としている俺を、エルフの冒険者の人が助けてくれて、試しにギルドで能力を測ったら、魔法の才を持っていたそうでな
魔道士として、冒険者ライフを送ってるんだ
危険もあるけど、助けてくれたエルフや、ドワーフ、魔族と多種族パーティを組んで楽しくやってるよ
面白いことに、この世界には魔王とか勇者とか、そういう存在はいないんだ
比較的平和でな
俺たち冒険者は、危険な魔物を狩ったり、ダンジョンで希少価値のある植物や物質なんかを採取するのが仕事で、人同士の大きな争いなんてものはない
種族間の対立もない、いい世界だ
俺はこの世界で出会った仲間たちと、充実した生活を送ってる
碧人たちとバカみたいな話しをしたり、どこかへ遊びに行ったりできないのは寂しいけど、俺はここでも幸せだから、あまり悲しまないでくれると嬉しい
もし、また会えることがあったら、前みたいにバカ話で盛り上がろう
土産話なら尽きないほどあるからさ』
信じられないけど、僕は信じることにした
なぜなら、僕は親友を疑う気にはなれなかったからだ
親友は僕をこんな風に騙すような真似はしない
また会いたいとは思うけど、それは僕がどうにかできることじゃない
これから先も、異世界の親友が無事で楽しく過ごしてくれたら、僕も嬉しい
あいつが幸せなら、僕はそれでいいんだ
さあ、いつか会える日が来た時のために、僕の方でも、なにか面白い話を用意しておかないとな
そうして、またバカ話で盛り上がるんだ
5/5/2025, 11:34:31 AM