ことり、

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あなたがいたから


あなたがいたから…

校庭の隅の大木を見上げた。
楠(くすのき)。
居場所のない「そこ」から逃れる時、
大抵はここに来た。
春には白い花で出迎えてくれ、
秋には実をつけ、
ツンとした匂いで私を包む。
木の真裏に隠れ、体育座り、
膝に顔を伏せた。

自分と対話した。
寂しいね。
ー寂しいよね。
悔しい。
ー悔しいよね。
自信なんて無いよ。
ー大丈夫、私もだよ。

いつしか、
楠と対話してるような気がしていた。
友達だった。

卒業し、同じ校区の学校に進み、
久々に母校を通りかかった時。
楠に張り紙が貼られていた。

どきり、と嫌な予感がした。

「長い年月をかけて生長した樹木が大木化・老木化した結果…」

要は、切る、ということだ。

わたしには、反対運動も、署名も、
やる気力も体力もない。
ただ、幹に手を置いて、感謝を伝えた。
それしかできなかった。

それ以来、母校には行ってない。
多分楠は切られたんだろう。
見に行けない。
ただ、心の中に、楠はいる。
いつまでもいる。
















季語 夏木 なつき 夏の季語

6/20/2024, 1:34:02 PM