未央

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お題「冬の始まり」

はー…と息を吐けば空に白色の息が浮かび上がる。
寒がりの俺は、手袋にマフラーと完全装備しなければ外に出られなくなっていた。
マフラーをしている筈なのに首に冷たい感覚。
後ろを振り向けば、指先が真っ赤になっている彼女が首に触れていた。

「手袋忘れたー…。」

俺が上げたマフラーを着けている彼女が寒そうに手を擦る。
どうやら朝に持っていたカイロは凍えていた友達に上げてしまったようだ。
優し過ぎる彼女らしい行動である。
俺は、左手に着けていた手袋を貸してあげることにした。

「右手、ん。」

彼女の右手をぎゅっと握り、ポケットに突っ込む。
嬉しいようで、強く握り返してくれる。
どんどん暖かくなっていく彼女の手。

「ありがと。」

彼女の耳が赤くなっていたのが、寒さゆえか、恥ずかしさゆえか分からないのだった。
いつも明るい彼女が寒さで弱々しくなっていると、冬の始まりを感じる。

11/29/2022, 11:19:13 AM