hashiba

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強いゆえか他者からの理解を必要とせず、目立って何かを主張することがほとんどない。多くはない言葉数に最小限の声量、いつなんときも極端に物静かだ。そんな彼が珍しく、何やら物言いたげに口元をまごつかせている。聞き逃すまいとその体を抱え込み、耳元を唇に寄せる。近すぎるやら恥ずかしいやら文句が飛び出すが構わない。だって気になるだろう。こちらの手を握って顔を赤く染めて、そんなことをしてまで言いたいことなんて。どんな小声でもちゃんと聞き届けるので、さぁどうぞ。抵抗する腕に早鐘を打つ鼓動に声以外全てが騒がしいなか、その心ひとつに耳を傾けた。


(題:耳を澄ますと)

5/5/2024, 7:58:33 AM