静流川 洸

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『神様が舞い降りてきて、こう言った』

僕は神など信じない。だけど、僕の両親は神様の熱心な信者であり、僕も毎週教会に連れて行かれる。
信じていないのにお祈りに行く‥いや、行かなければならないなんて変な話だ。信じていない僕なんかに祈られて神が本当にいたら気の毒なものだ。

だが、これだけはわかってほしい。僕が来たくて来ているのではない、祈りたくて祈っているのではない。全ては親に逆らえないせいなのです。僕も哀れな子羊なのです。決して貴方に不敬を働きたい訳ではないのです。‥
まぁ、神なんていないから、こんな言い訳もいらないんだけどさ。

今日も両親に連れられて教会を訪れる。ゴシック建築と言うのだろうか、白を基調とした壁に色とりどりのステンドグラスがはめられている。

お祈りが終わると、布教活動の時間になる。

「天次、今日もしっかり新しい信者を増やすために、神の素晴らしさを皆様に広めてね」

うっとりとした表情で優しく僕に話しかける母の瞳に光を見なくなったのは、いったいいつからだっただろうか。

「わかったよ。母さん」

僕は適当に返事をして、教会から出た。

母は駅前で布教活動を行い、僕は適当にブラブラして時間を潰す。本当は布教活動をしていないと母さんに怒られるのだけれど、自宅訪問を行っていたと言えばどうとでもなる。

僕の父方の祖父母はやはり神の熱心な信者で、父も幼い頃から神を信仰していたらしい。
母は無宗教者だったけれど、父と結婚し、僕が産まれてから熱烈な信仰となったようだ。

昔は普通に優しいお母さんだったんだけどなぁ‥俺が中学にあがる前までは、世間一般的な普通の母親だったはずだ。
いつから、あんなのになっちゃったんだろう‥。

仕事をして稼いだ金の大半を神に貢ぎ、休みは神のために布教活動をする。
僕はそんな両親が嫌いだ。両親をそんなふうにした神という存在はもっと嫌いだ。

「17:00からライブするので、ぜひ来てください〜」

街中をぶらついていたら、かわいらしい女の子に声をかけられ、ライブのチラシをもらった。地下アイドルというやつらしい。
あまり興味はなかったが、時間をつぶすため、ライブに足を運んでみた。

〜♪

「わたしを信じて♪」

歌う少女の姿に僕は目を奪われた。
なんて素敵なのだろう。讃美歌よりもノリがよく、ダンスも見ているだけで元気が貰える。

神はここにいたんだ。

「初めてライブに来てくれた方ですよね?よかったらわたしたちゴッドエンジェルシスターズの応援してくれると嬉しいです!」

「僕は‥今日から、あなたという神を信仰します」

つい口からでてしまった。少女は驚いたような顔をしていたが、それから顔を花が咲くようにほころばせた。

僕の目の前に舞い降りた彼女は、こう言った。

「貴方が信じてくれるなら、わたしはそれに応えましょう」

この日、僕ははじめて神を信じた。

-fin-

7/27/2023, 10:19:08 AM