千花

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【降り続いて】

 朝から降り続けている雨を、私は窓から眺めている。
「まだ帰ってなかったのか?」
「うん。傘忘れちゃって」
 声で仲が良い男友達だとわかった私は振り向かずに答える。
「なるほどな」
 雨から目線を動かさないまま、独り言のように発してみた。
「ずっと降り続けてくれないかなぁ」
「それおまえが困るだろ。それに、止まない雨は無いさ」
 そう言った彼はきっと苦笑している。
「わかってるって」
 確かにいつかは晴れるだろうけど、しばらくはこのままでもいいんじゃないかな。だってせっかく私の代わりに泣いてくれてるんだから。
「あのさ、さっき知ったんだけど――」
「何も聞かないで」
 触れて欲しくない私は咄嗟に遮ってしまった。直後我に返って振り向いた所で相手と目が合う。
「わかった。そっちが話したくなるまで待つよ」
「……ありがと」
 いつにも増して真剣な表情に、そう言うのがやっとだった。

5/25/2024, 12:06:31 PM