とよち

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メモを取ろうと紙を探していた。ふと昔の手帳が出てきた。これでいいかとペラペラとページをめくると血痕がついていた。その瞬間私の脳裏にこの痕をつけた日の記憶が鮮明に浮かんだ。中一の時だった。私はおもむろに日記をつけ始め、目に涙をいっぱいにためながら、ペンを走らせていた。それでも気が落ち着かず、私はそのページを破いて投げた。いじめ、進路、成績。その時は何もかも上手く行かないように感じた。人は良かったことがあった時に、自分に視点が戻って元通りになったり、喜んだりしてすぐにその時の痛みや苦しみを簡単に忘れ去ってしまう。だがそれはまた1つ歪みが起こると、その時以上にもがいてしまう。私は何度もそれが続き、イライラが限界に達していた。私は持っていたペンで左手を突き刺そうとした。「出来ない...、出来ない、出来ない!!!」私は弱かった、自分がイライラし、人や物には簡単に当たれるのに、自分を傷つけることが怖かった。私は泣いた。そして弱い自分を嘲笑った。急に真面目な顔に戻る。私は近くにあった鉛筆の後ろを鼻に突き刺した。鮮血がボタボタと手帳の上に鮮やかな模様を描く。それはいずれ染み込んで、黒ずんだ色へと変わっていくのだ。だが私は満足ではなかった。それは私が鉛筆の芯ではなく、裏でさしたからだ。また自分が負けた気がした。私は意味もなく叫んだ。下から母の怒号がきこえる。私は髪をつかみひき抜こうとしたが、抜けなかった。また歯を食い縛り、だが今度もどうにも出来ず、繰り返しているうちに強い吐き気を感じ、転げ落ちるようにしてトイレにかけこんだ。母に気づかれないようにストーブを最大までつけ低いボイラー音を耳が痛くなるまでひびかせた。そうしてから私は十分程、便壺のなかに消化されきっていない、黄色くなった朝飯を勢い良く吐き続けた。トイレから出て、まだガンガンと響くはっきりしない頭で2階に戻り、よろめきながらやっとの事で椅子に座った。鼻に手をやる。いつの間にかほとんど血は止まっていたが、Tシャツと机にここで殺人事件がおきたかのような血痕がベッタリとついていた。私は血のついた手帳を閉じ、机と鼻をティッシュで拭いた。Tシャツは母にばれないように、たまった塵を捨てに降りるふりをして、塵袋の奥底にねじ込んだ。同じようなTシャツが部屋に沢山あったのでばれなかったが、血のついた鼻はばれてしまった。私は「鼻をほじっていて血を出した」と嘘をつき、上手くその場をごまかした。私はもう一度部屋に戻り、机に置いてある手帳を引き出しの奥底にしまいこんで二度と開けまいと誓った。その後はどっと疲れ混んでしまいベットに倒れるようにして、夕方まで眠った。
「そうか、そんなことがあったか」私は誰かに語りかけるようにそう呟いた。私は手帳を置き、机に寄りかかった。そのとき、不意に何かをメモに取ろうとしていたことを思い出した。「何書こうとしてたんだっけな...。」私は金田一のようにガサガサと頭をかきながら手帳を棚に戻した。

「手帳」


後書き
完全に創作です。ちょっと汚くてすみません汗。


お題 閉ざされた日記

1/18/2024, 1:40:56 PM