温め鳥、というらしい。
後から知ったけれど。
猛禽類が小鳥を捕まえて、その温もりをカイロがわりに寒い夜を明かすこと。その小鳥のこと。
翌朝小鳥を離した猛禽類は、温め鳥となった小鳥が飛び立った方角へは一日狩りへは行かないなんて、いかにも寓話っぽい言い伝えまである。
どんな強者も恩義は忘れないとか、なんかそんな教訓なんだろう。
そもそも許可なく弱者を都合良く使うなってツッコミはきっと求められてない。
さて、この言葉を知った自分は、なんと小鳥側らしい。
温めたつもりもなければ逃げたつもりもないけれど。
ただまあ、猶予の一日はとっくに過ぎてて猛禽類側がスタートダッシュをかけたっていう噂を耳にしてしまったからには、こちらも全力で応えなくては。
逃げちゃらぁ。
逃げる理由は無い。でももうそこはフィーリングで。
追われれば逃げる。これ必然。
その視線が、爪が、翼が絶対に届かない場所へ。
それで、恩義とやらで我慢した一日を、必ず後悔させる。
そもそも手放したことを、胃の奥から後悔させる。
お互い背中も見えない、足音も聞こえない、二度とその体温を知ることもない、それくらい
#遠くの空へ
4/12/2023, 10:52:49 AM