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終わらない物語

都会の冷たい夜風がぐちゃぐちゃになった髪の毛を揺らす。襟はめくれたり、シャツは出たり、だらしない服装の隙から直に当たる肌が寒いと言っている。こんなでも俺はまだ生きてるのだと実感した。ひとりポツンと静かに輝く月は寂しげに世界を照らす。久しぶりに見る夜空は懐かしくて神秘的に見える。空が綺麗すぎるのか、この高さから見るビル群は穢れてて、ここで働いてた事実に身震いする。
 今日、俺は仕事をクビになった。理由は聞かなかった。自分でもわかってる。クビになるのは初めてではない。それを彼女に慰めてもらおうと連絡すると、振られた。ニートの俺までは好きにはなれないみたいだ。今夜は何も考えず飲みまくろうと思い通帳を探した。バッグに入れていたはずの通帳はどこかでなくなっていた。何だこれ。
 おのずと心の底から笑いが込み上げてきた。俺は壊れたおもちゃみたいに笑い続けた。一瞬で何もかも無くなった。

 俺は屋上の淵に立った。一歩でも踏み出せば確実に落ちる。覚悟を決めて空を飛んだ。

恐怖など感じなかった。ただ落ちていく感覚だけが頭の中に残ってる。気づくと俺の口にはダクトがつけられていて、体の隅々まで包帯でくるまれていた。すぐ横には父と母が泣きながら何か言ってる。
神様は残酷だ。まだ俺に生きろと言うのだから。

1/25/2025, 3:13:29 PM