がしゃん。
自転車が地面にぶつかる音と共に、男の子が転んで手をついた。私がこの公園についてからさほど時間は経っていないが、そろそろ両手の指では足りないくらい同じ光景を見ていた。
「あとちょっとなんだけどな」
男の子には聞こえていないと分かりつつ、私は独りごちた。
見ればやはり、地面から足を離すのが怖いのだろう、おっかなびっくりといった感じでペダルを漕ぎ出しては転倒する。
「ああ、おしい!」
ただ今回は少しだけ違った。彼なりに考えて挑んでいるのだろう、転ぶ前にハンドルを動かし体を反らせ、どうにかしてバランスを取ろうとしていた。
「よし、もういいか」
少しの休憩のつもりが、思いのほか長くなってしまった。
冷ました体をほぐすように、軽くストレッチをしてランニングの準備をする。
(あそこまでできるなら最後に必要なのは思いきりだろうし、すぐに乗れるようになるかもね)
自転車の練習をする男の子を背にそう考えながら、公園の出口まで歩いて行く。
がんばれ。心の中でエールを送っ私はて走り出した。
その一歩目は、いつもより力強く感じた。
『力を込めて』
10/7/2024, 1:35:19 PM