部屋の片隅で
あれからどのくらい時間が経ったのだろう。そもそも “あれから” とはいつからだ。いったい今日は何月何日で、今は何時何分なんだ。大丈夫、ちゃんとわかる。わかっているはずだ。大丈夫だよ。
後先も考えずに、周囲の環境から逃げるように引き籠った。人目も憚らず、全ての連絡手段はごみ箱へ落としておいた。逃げるは恥だが役に立つとはまさに。そしてそれは自分自身との対話に全てを注ぎ込み、見えている答えに触れないようにただ時間を浪費するだけであると気付いたのでもあった。このままがいい、このままでいいわけがない。大丈夫ではないのかもしれない。
時折、窓の外から聞こえる道路工事の音や、隣家の子供があげる奇声で、望んでいない現実に帰ってくる瞬間がある。その際に日付と時間を確認する。そこでようやく、今はもう冬なんだと知る。大切だった季節を感じる感覚はもう失くしてしまっていた。いったいこの感情は何処へ流れ着いていくのだろう。誰かに大丈夫だと言いくるめて欲しかった。
小さなこの部屋だけが、自分だけの味方をしてくれている。欲望のままで居たって、絶望の淵を覗き込んでいたって、何も変わらないでいる。営みは破綻しても生活は送らせてくれる。四方は歪んで真ん中はもう無くなっていても。大丈夫なのかな。
部屋の片隅で小さく言い放つのは、行動には移せない既視感たっぷりの希死観念。今日は何月何日で、今は何時何分なんだろう。大丈夫、ちゃんとわかる。わかっているはずだ。大丈夫だよ。
12/7/2022, 10:21:26 AM