葉月

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「夜の海」

 夜の海に沈んでいた経験が確かにあると思う。この話を誰かに語ったとしても誰も信じることはできない。何故なら、自分自身もいまだ信じることができない。だから、あれは夢だったと思うことにした。
 人魚姫がかなわぬ恋に涙を流した、夜の海。私も運命への悲哀に涙を流していた。人魚姫は海の泡となったが、それを神様はご覧になっていた。アンデルセンの『人魚姫』は究極の愛の物語である。愛する人のために命を捨てる覚悟はありますか?「はい、あります」そう答えたのが人魚姫。
 神様だけがご存知なら、それで良い。そうした覚悟で生きるのは本当に勇気のいることだ。今日は終戦記念日で、今年も正午に黙祷を捧げた。その時、祈りと共にある願いも語った。何を語ったのかは言えない。あの悲しい戦争で亡くなった御霊だけがご存知なら、それで良い。
 私は己れの心には正直でありたい。誰に知られることがなくても、何もかもご存知の方が、たくさんいることに気がつくことができた。いま、そのことに無上の喜びと感謝の思いを抱いている。


8/15/2023, 12:18:55 PM