G14

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 一人星空の下で、粛々と準備を始める。
 これから俺は神聖な儀式を行う。
 せっかくなのでと友人も誘ったのだが、『バカなことしてないで、早く寝ろ』と言って怒られた。
 お前は俺のオカンかよ。

 まあもともと一人でする予定だったので問題は無い。
 ただ、儀式を準備するための人員が欲しかっただけである。
 別に寂しいわけではない……

 儀式の場所は、まだ種をまいていない畑。
 もちろん、自分の土地なので犯罪ではないし、迷惑も掛からない。
 ただ草刈りをサボっていたので、雑草が気になるところ。
 というのも、今回の儀式では火を使う。
 まだ寒いので、ポツリポツリ生えているだけだが、延焼の心配がある。
 念のため、消火器を持ってきてよかった。

 道具は全て持ち込んだので、今度は儀式の準備だ。
 まずは火入れ。
 これをしなければ、儀式を始めることはできない。
 儀式台に炭と着火剤を入れて、ライターで火をつけしばらく待つ。
 変化を見逃さないよう観察していると、炭の一部が赤く染まり始める。
 どうやら燃料の炭に火が付いたようだ。

 この小さな火を絶やさぬように、様子を見ながら風を送り、火を大きくしていく。
 慎重に、時に大胆に、風を送る。
 地味なように見えて、意外と難しい。
 若いころは力加減を間違え、火を消してしまった事は一度や二度ではない。
 当時は落ち込んだものだが、今となってはいい思い出だ。

 そして順調に火はは大きくなり、側にいるだけで汗をかくほど熱が伝わってくる。
 これぐらい火が強くなればいいだろう。
 燃料の追加も必要なさそうなので、燃えている炭の上に網を置いて蓋をする。
 これで準備は整った。

 それでは儀式を始めよう。
 クーラーボックスからあるものを取り出す。
 それは儀式で捧げる生贄の肉。
 肉を敷かれた網の上に置き、哀れな生贄を焼きあげる。
 肉が焼ける香りが俺の鼻を刺激し、思わずツバを飲み込む。
 体が『早く生贄をよこせ』と欲するが、なんとか押さえつけて、時が来るのを待つ。
 そして十分に火が通った肉を、あらかじめ用意していた秘伝のたれに絡めてから、口に運ぶ。

 口の中で肉汁が広がり、得も言われぬ幸福感に包まれる。
 そして噛めば噛むほど溢れ出る旨味は、俺に生の実感を感じさせてくれる。
 そして咀嚼した肉を飲み込むと、気づけば叫んでいた。

「くぅぅぅ、ウマい!全く星空の下のBBQは最高だぜ」

4/5/2024, 1:38:48 PM