ななしの倉庫

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※渡り鳥

ふと、周りを見渡す。
「随分遠くまで来たと言う感じだなぁ」
感慨深く一言呟いて、俺はヘルメットを外した。

目の前に広がるのは、何処までも続く海。
視界の端には灯台が見える。
本当は灯台元までバイクを走らせたかったのだが、残念ながら途中で徒歩専用道路になっていた。

スタート地点は実家だった。
そこから日銭稼ぎをしつつ続けた国1周のバイク旅。
定期的に鳴るポケベルは、親の心配を知らせたが、俺は構わず渡り鳥を続けた。

「そろそろ、折り返すかな」
まさか国を1周するのに3年もかかるとは思っていなかった。無計画過ぎたかもしれない。
渡り鳥を自覚しているなら、年に1度は帰った方が良かっただろう。

「なるべく寄り道無しで帰ろう」
あの暖かく厳しい実家へ。
五体満足、笑顔で帰宅してこそ、旅は成就されるのだ。

5/29/2025, 10:33:32 AM