村人ABCが世界を救うまで

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帰ってきた彼女を、半ば強引に振り向かせた。
「またあの男達に会ってきたんですか」
そうよ!と、彼女は思ってもない大声を出した。

「私1人でできることは限られているわ。だから、あいつに…下ったの。仕方なかった…。矛盾してるとでも言うの」
彼女の顔は明らかに不満がにじみ出ていた。不機嫌…よりも不信感に近い。
自分は冷酷に告げた。
「矛盾だらけですよ。あなたは『誰かの傘下に落ちるのが嫌だ』と言いながら、彼らに利用され、守られることを望まざるを得ない状況に置かれている。それが最大の歪みです」


組織の機嫌を取り、西門を支持し、父の思惑を汲む…。そんな綱渡りをしてまで守られようとしているのは、あなた自身というよりは、彼らにとって都合の良い『駒』『付加価値』なのではないか。
「そう、か。そんなにおかしいか。そんなに歪んでいるか。だって、私の力だけじゃ全てに対応できない」
彼女は銀髪を振り回して叫ぶ。彼女の息が上がるのを知っていたけど、落ち着くまで待った。

「歪んでいるのはあなたではなく、あなたをそのように追い込んだ彼らの方です。愛していたはずの相手から拒絶されれば、心が壊れそうになるのは当然のことですよ」

そう、彼女は愛しているのだ。未だに。何年も前に亡くなった人を。

あなたが彼らを敵と認められないのは、あなたもまた付加価値を見出しているからだ。とまで言うと…あまりに卑怯かもしれない。


「甘い言葉の裏には、必ずと言っていいほど毒が仕込まれているものです。特にあなたが切望している『救い』を餌にされるのは、最も卑劣な罠ですよ」

違うのよと、彼女は首を振る。声が震えている。
「貴方まで…失いたくないの…」

透明な涙がぽたりぽたりと落ちて手を濡らしていた。

5/20/2026, 6:44:19 AM