「俺は太宰の人間失格のように、恥の多い人生を送ってきた」
そうあなたが言った時、私は確信した。
「この人は私の片割れだ」
あなたとは違う形で私も似た境遇を経てきた。
親に恵まれず、友達すらできなくて、
学校の先生にも疎まれて。
学校とは変わり者をいじめる場所だと思った。
社会とは壊れてなくても電池を抜かれた時計は
使われなくなり、排除する世界だと思った。
そんな理不尽な世界で私とあなたは出会った。
「二人の特技が才能と思える国へ行こう」
あなたは突然そう言って、
着の身着のままの私を空港へ連れ出した。
「私に特技なんてない」
あなたに正直に言った。
「そんなことない。
君には経験を言葉にできる力がある。
俺は下手だけど、絵を描くことができる。
君の好きな文章を書き、それに合わせた絵を俺が描く
それを評価される国へ行こう」
似たもの同士だと思っていたあなたが
成功者のような手の届かない高くそびえるエベレストのように思える。
「大丈夫だよ。恥の多い人生は他にはない魅力がある
君はまだ知らないだけだ。
海外には見知らぬ世界が広がっていることを。
君と飛び立ちたい、そう、君がいいんだ」
あなたがその一言を言い放った時、
眼は潤んでいた。
8/22/2025, 9:01:30 AM