『秋晴れ』2023.10.18
パァンと高らかな号砲。転がるように児童たちが一斉に走り出す。観客席からは父兄の歓声が上がる。
「うおー、頑張れー!」
それに負けないぐらい大きな声で俺たちは応援する。舞台で鍛えた声量で応援すれば、他の父兄が面白そうに笑った。
今日は俺の息子の運動会だ。そして、金髪の彼の娘ちゃんの運動会でもある。
奇しくも俺たち全員のスケジュールがオフだったので、五人そろって応援にきたというわけだ。
「いけ、そこだ、差せ!」
「いやいや、競馬じゃないんだから」
応援に熱が入ってしまいそう声を張り上げると、ツッコミが入る。
そんなやり取りすら面白いと感じてしまうのは、ここにいるのが俺の大好きな仲間たちだからだ。
俺の息子も他の連中が応援に来ると知たときは、照れてはいたが当日になると、かけっこで一番になると意気込んでいた。
息子は顔を真っ赤にして前へ前へ進んでいる。後方からのスタートで最初は出遅れていたが、今は一位をキープしている。しかし、その後ろには俊足で知られる彼の友人。どちらが一位になってもおかしくない。
俺たちの応援にも力が入る。競馬のような応援だろうとかまわない。
ゴールまで、あと少し。どちらが勝つか――
そして、ゴールテープが切られた。勝ったのは俺の息子だった。差し切ったのだ。
勝利を祝いつつ、他の子たちの健闘も称える。げれっぱの子がゴールしたときなんて、うちの最年長の彼は号泣しながらバチンバチンと拍手を送っていた。
秋晴れのもと、感動と大歓声のなかで、かけっこは幕を下ろした。
――ちなみに、運動会が開始して一時間のできごとである。
10/18/2023, 11:03:09 AM