わをん

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『また明日』

入学してからもうそろそろ2ヶ月。慣れたような慣れてないような感じだけれど友達はできたし、毎朝ちゃんと通えている。部活の仲間もできたし同性ながらもかっこいい先輩にも出会えた。
「じゃあ、また明日ね」
明日もがんばろうと思える成分はいろいろなもので構成されているけれど、先輩からの言葉がけっこうな割合を占めているように思える。
ある日に上級生の教室へ続く渡り廊下で制服姿の先輩が誰かと話しているのを見かけた。遠目にも険悪なムードを感じとったので隠れながら様子を見ていると、話していた相手がどこかへ去って取り残された先輩は泣いていた。その日の部活に先輩は来なかった。
次の日に部活に顔を出した先輩を見て、昨日の夜は先輩をずっと心配していた私は心から安心した。先輩がいれば昨日あまり楽しくなかった練習も筋トレもちゃんと楽しくなっていたことにも安心した。
部活を終えてそれぞれ帰路につくときに先輩のもとへと駆け寄った。
「先輩!」
「あら、おつかれさま」
「また明日!」
思ったより大きな声が出て注目の集まった中、先輩はなんだかいつもより微笑んでこう返してくれた。
「うん、また明日ね」
小さく手を振る先輩と、特に何も起こらなかったなという雰囲気の中で明日もがんばろうという気が湧いてくる。先輩にも同じような気が湧いていたらいいなと思いながら、遠ざかる背中を少しの間見つめていた。

5/23/2024, 3:29:54 AM