目に刺さるネオンカラーの看板の脇をすり抜けて路地裏に入る。念のため後ろを振り返るが誰もいない。
顔を隠すようにフードを被り深呼吸し合言葉を紡ぐ。
「とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこのほそみちか」
「てんじんさまのほそみちじゃ」
どこからか聞こえた声とともにゆらりと視界が歪み、先ほどのネオンカラーの街並みが消え、提灯行灯が並ぶ。
「また来たのか?」
呆れたように話しかけてくるヤツを無視してぶらりと歩きだす。
転人(てんじん)したオレの故郷はここだ。あのネオンカラーの冷たい街じゃないと自分に言い聞かせながら行く宛もない道を歩くしかなかった。
6/11/2024, 1:48:17 PM