はす

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届かない……

どうしたって届かないものはある。荒唐無稽な夢であったり、高すぎる理想であったり。届かない、と分かっているものはいい。まだ、諦めがつくから。一番辛いのは、ほんの少し、手の指の先が掠めるように、届きそうで届かないものだと、私は思う。
将来の夢、職業、それ以外でもいい。何か、自分の憧れるもの、なりたいものへ向かって人は努力する。憧れに向かって、必死で努力を重ねる人も大勢いる。そして、夢半ばで届かなかった人もまた、きっと大勢いるのだろう。私には、なりたいと本気で努力したことがあまり無いから、その気持ちを完全に分かるわけではないのだけれど、短い人生の中でも、私なりに努力してそれでも届かず挫折した経験が幾つかあるから、ほんの少しはその辛さを理解できるつもりだ。
何が辛いって、今までの努力、時間全てが無意味に水泡に帰すことだ。結局その目標に届かなければ、ただ辛いだけで、何の意味もない。努力した事実があれば、実らずともそれが自信に繋がるのだと、何処かで聞いたが、それは敗者の負け惜しみのような、屁理屈のような、慰めの言葉でしかない。
どうせ届かぬなら、最初から手を伸ばさなければ良かったと、思った。届きそうだと、手を伸ばし続けるから、終わりが見えないから、辛いのだと。ならば最初から手を伸ばさなければいいのか。

当てもなく広大な砂漠を歩く自分を想像する。喉が渇いて、何処にあるのか、まず存在するのかもわからぬオアシスを探して、私はひたすら歩くだろう。そしてそれは果てしなく辛い。オアシスなど無いと分かることができたなら、きっと諦めて潔く死を待つだけ。ありもしない水を求めて、過酷な道を歩む必要は無い。
……果たしてどちらが幸せなのか。経験したことがないから分かりやしないけれど。救いがないことが救いなのだと、何処かで読んだ気も、している。

5/8/2025, 12:37:50 PM