ㅤ脛に鋭い痛みを感じ、文字通り飛び起きた。あまりの痛みに声も出ない。
「渡るぞ!」
ㅤ窓の外に目をやったまま、祐希はチョコレートバーをかじっている。硬いベッドに車輪の振動が伝わってなかなか寝付けなかったはずが、いつの間にかしっかり眠れていたらしい。
ㅤ漂う甘い匂いに空腹を感じた。上着を羽織ってから、東京駅で買った同じものをリュックから探る。
「見られましたか? disconnection」
「もちろん!」
ㅤ満足そうな笑顔が親指を立てる。岡山での連結切り離しは絶対見逃せないイベントだ、と熱弁していたのだ。昨夜はほとんど眠っていないだろう。
「6時過ぎからあんなにアナウンス入ってたのに、全然起きねえんだもんな」
ㅤもったいねーの。
ㅤチョコレートの残りを口に押し込んでスポドリで流し込むと、祐希は大きな窓に手をついた。
ㅤ師走の街がぐんぐん明るくなっていく。目の前に迫った橋桁が勢い良く後ろへ流れる。窓に触れた指先が白くなった。寝台列車が海を渡る。
「きたー!ㅤ瀬戸内海ー!」
「Sunriseで見るSunriseですね~!」
「発音良すぎてムカつくー!」
『Sunrise』
5/22/2025, 9:41:19 AM