あると

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『七色』

 神は七色の身体を持っていたらしい。

 虹のように光り輝き、けれども虹のように色が分かれてはいなくて、あんなにはっきりした色でもない。
 淡い光の七色が、コーヒーのラテアートのように細い線で分離しながらも混ざりあった、神秘的な色だったそうだ。

 神の死後、その御姿は選ばれし生き物たちに引き継がれたという。


 ____私の瞳は七色。右目だけ。

 子どものころは綺麗だって囃されて、お気に入りだったこの色。
 でも今はその色のせいで、私は神殿から出られない。

 鳥籠の中には可愛い小鳥。両脚が七色。

 中庭にはゾウ。耳が七色。

 膝上には猫。昼寝中。この子は胴と前脚が七色。

 牧師様によると、神から引き継がれた七色がすべて揃うと神が復活するのだとか。

 見つかっていないのは、左目だけ。

 どんな子が持っているのだろう?私と同じ、この瞳を。
 犬かな、馬かな、ライオンかな。もしかしたら人間かもしれない。

 その子が来て、神が復活したら、私たちはどうなるのだろう?
 自由になれるのかな。それとも死ぬの?はたまた、神に取り込まれたりする?


 わからないけど、いいや。

 退屈な神殿の生活が終わるなら、もうなんでもいい。


 ____だからはやく、見つかってね。左目さん。

3/27/2025, 3:53:19 AM