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#1『力を込めて』

 風でカーテンが揺れ、教室に差し込む西日は彼の髪を明るく照らす。教室には手を伸ばせば届く距離で佇む私達。グラウンドで野球部がボールを打つ音が聞こえる。

 ――今、ここで渡そう。スカートの裾を握りながらなんとか言葉を発する。

 目を見開いた彼は、困ったように笑い片手で私の手紙を押し返した。いいの、全然大丈夫。こちらこそごめんね。そんなこと1ミリも思ってもいないけど。

 教室から出る彼の背中を見送った後、しゃがみこんで思いっきり泣いてやった。彼への思いを綴ったそれも、頬を伝う涙で濡れて名前が滲んでいく。くしゃり、手紙を潰して受け入れようとする。

 アイスが食べたいな。ちょっと遠くのコンビニへ行こう。自転車に乗って風を切り、坂道を下る。

 こんな思い出もあったっていいじゃない。そんな風に思えた17の夏果でした。

10/7/2023, 11:34:25 AM