《わぁ!》 ※腐向けです。
【シュンside】
「わぁ!、雨降ってるじゃんか!」
学校の昇降口を出て、思わず声を出す。
天気予報は雨が降るなんて一言も言ってなかったのに。
雨はシトシトどころかザーザーと強めに地面を叩いている。
仕方ねぇ、小ぶりになるまで待つか。
諦めて昇降口の角の方で佇んでいた俺の横を1人の男が傘をひろげながら通りすぎた。
タクミ?
そいつは寮で俺と同室のタクミだった。
相変わらずのイケメン面だ。
俺はタクミを追いかけ声をかける。
「おいっ、無視してくなよ、傘入れろっ!」
『ああっ、シュンか、全く気づかなかった』
「嘘つけ!」
言いながらタクミの傘に強引に入る。
2人とも身長177cmか8cmくらいあるので、デカい。当然ながら狭い。
『はぁ・・・』
タクミからため息が聞こえたがスルーしておく。
「ありがとな!助かったぜ」
俺はニッと笑いながらタクミに言う。
『はぁ、、仕方ないな』
俺をジト目で睨むタクミ。
2人で相合傘をしながら寮まで歩くことになった。
俺は心の中でガッツポーズを取った!
俺はタクミのことが好きだ、友達としての好きではなく恋愛の意味で・・・。
喧嘩することも多く、雑に扱われたりする事もあるけど、心が許せる奴というか、お互い無言でも気にならないしむしろ心地よいというか。
とにかく気づいた時には好きになっていた。
好きな相手と相合傘!最高のシチュエーションに心が躍る!
【タクミside】
俺は心の中でガッツポーズを取っていた!
昇降口でシュンを見かけた時にこうなるだろう事は予想できた。
人懐っこいシュンの事だ、俺の傘に絶対入ってくるだろうと。
だから俺はわざと声をかけなかった。
自分から声をかけるのが照れくさかったというのもある。
最近気づいたのだが、どうやら俺はシュンの事が好きらしい。
ついシュンの事を考えてしまうし、いないと何をしているか気になってしまう。
同じ男同士だ、何度も気のせいだと思い込もうとしたが、シュンを意識してしまう自分の気持ちを誤魔化すのは無理だった。
そんなシュンと相合傘!
嬉しすぎるだろう。
つい緩んでしまいそうになる顔の筋肉を引き締める。
無口な俺と違ってシュンはよく話す。
シュンが話してるのを聞きながら寮への帰り道を歩く。
雨は変わらずザーザー降りだが、今日だけは雨に感謝だ。
寮へ着き、傘を閉じた俺にシュンが慌てたように言う。
「えっ?お前右肩びしょ濡れじゃねーか!」
肩が濡れているのは、シュンが濡れないようシュン側に傘を傾けていたからだ。
『部屋に戻ったらすぐ着替えるから大丈夫だ』
俺はそう言ったが、シュンはポケットからハンカチを出し、俺の濡れた右肩を拭っている。
「風邪引いたらどうすんだよ・・・」
『お前が風邪を引くよりはいい』
俺はシュンを見つめながら小声でつぶやく。
「え・・・っ」
俺のつぶやきが聞こえたのか、みるみるうちに顔が赤くなるシュン。
「俺はタクミが風邪を引く方が嫌だ・・・」
赤い顔のまま言うシュンとどことなく甘い空気に乗せられて、シュンの唇に唇をよせ、ほんの一瞬キスをした。
リップ音は雨のザーザーという音にかき消された。
シュンの顔が驚きに変わるが、シュンもこの甘い空気にやられたようで、お返しとばかりにタクミにキスを返してきた。
軽くふれるだけの拙いキス。
『シュン・・・、好きだ』
「俺もっ、俺もタクミが好きだっ」
両片思いが、両思いになった瞬間だった。
1/26/2025, 1:20:36 PM