無味乾燥な人生だった。
騒がしく、喧しく動く喧騒に包まれた交差点のど真ん中。
自分の中を埋めていた大切な何かが溢れていくのをひしひしと感じながら、向けられるカメラの視線と冷えた地面の感触を、これでもかというほど味わっていた。
適当に生きてきた人生の末を、俺はたった今知った。
幼少期を変に要領良く過ごし、典型的ないい子のテンプレートをなぞって終わらせた。
学童期だって、先生の顔色を伺って、いかに努力せず、そこそこの、目立たない結果を残していくかを学んで終わった。
アニメや小説にあるような青春なんてどこにもなくて、あるのは世間好みの味に味付けされた、量産型のありがちな人生だけだ。
周りに流されて就活をして、甘い誘い文句を疑いもせず入社した。
案の定そこは真っ黒で、見えない残業は当たり前、理由のない上司の叱責に、常にピリついた職場の空気。
誰もが死んだような目をして電車に乗り込んで、重たい溜息と一緒に運ばれていく。
幼い頃の無垢な夢を叶えられるような才能ある人間はほんの一握りで、後の有象無象は大抵、その夢を捨てて社会の型に収まっていく。
こんなザマを、まだ幼かった自分が見たら何と言うだろうか。
保育園の頃の俺なら、何故そんなにつまらなさそうなのか、なんて聞いてくるだろう。
小学生の頃なら、何故そんな会社を選んだのか、と。
中学生なら、もっと察しがいいから、きっと何も言わない。
そんな人生を送ってきたのだ。
もしも、もしも未来が見られたのなら、俺はもっと価値のある人間になれただろうか。
交差点の真ん中、腹に突き刺さった刃もそのままに、俺は瞼をゆっくり下ろした。
人生の中で一番注目されて、一番カメラを向けられた、皮肉な形の夢の叶え方だった。
テーマ:もしも未来を見れるなら
4/20/2026, 9:12:14 AM