七瀬奈々

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「はっ」

 ガタッ、と身体が悲鳴を上げて目が覚める。どうやらミニテーブルに突っ伏して寝ていたらしく、全身のあちこちが痛い。背中を伸ばそうとすれば、腰や肩、首がゴキゴキと音を立て、床に伸ばした足を動かせばこちらも音を鳴らした。寝起きの爽快感とは真逆で頭痛と吐き気がする。
 昨日の記憶があまり無いけれど、テーブルに乱雑に置かれた酒の空き缶が無慈悲に現実を告げていた。

 昨日何があったのかを思い出そうとする。うちで働いてる兄弟たちにクリスマスプレゼントを渡して、待ち合わせ場所に着いて、移動しながら駄弁って、友達の家に着いたからマーケットで買ったクリスマスの飾りをつけて、ケーキを用意して、パーティー開始、そして……

 あとは覚えていない。何があったんだっけ?
 少し目線を右にずらせばトランプが散らばっていた。そうだ、昨日の夜は3人でカードゲームをした。
 左側にずらせば男性らしい体格の素足が見えた。
 ん?

「わーっ! ちょっと○○! どんな所で寝てるのよ!」

 仕事で会う時は重く堅苦しい服を着ている友人がそれはそれはひどい格好で寝ていた。うつ伏せで倒れる身体をゆさゆさと揺らしても、ウーン……と苦しそうに唸る声しか聞こえない。まさかと思って部屋を見回すと、ぐちゃぐちゃになった飾りが落ちた床で、大の字になって寝ている姿も見つけた。こちらは幸せそうな顔をしていた。
 ……寝顔も格好いいな、なんて思ってる場合じゃないわよ! あたしってばしっかりしてよ!
 恋は盲目だが今は目を覚まして欲しい。自分の頬をぺちぺちと叩いた。

 何日も前から準備していたクリスマスの過ごし方が、記憶を飛ばすくらい酒を飲むことになったのは想定外にも程があった。せっかく好きな人も交えて過ごす1日だったのに、こんなことになって良い訳が無い。
 今はもう26日。クリスマスは終わったけど、やり直しくらいは出来るかしら。
 節々が痛む身体を起こして立ち上がる。まずは片付けをして、この人たちが起きたらパーティーのやり直しを提案してみよう。楽しいことが好きな2人だからきっと了承してくれるはずだ。
 今度は酒類一切禁止で。



お題:クリスマスの過ごし方

12/26/2023, 3:03:40 AM