300字小説
探偵と助手
彼は全てにおいて特別な存在だ。豊富な知識、鋭い洞察力。それらをフルに活用した推理力。彼の推理は水も漏らさぬ完璧な理論で、更に射撃や体術でも、あらゆる犯人を圧倒していた。
何故、凡庸な俺が彼の隣にいるのか、関係者は皆、疑問に思う。あのときまで俺自身そうだった。
「君は特別な存在だ」
ある夜、酔った彼がとうとうと俺に語り出した。
「どんな事件でも常に依頼人や関係者を気遣い、その思いやりで落ち着かせることが出来る。どんな危険な場面でも彼等や一般人を庇い、守り抜こうとする。そんな善性をもった人間が凡庸のわけないだろう?」
今日も彼の探偵事務所の依頼の電話が鳴る。
「行くぞ」
「ああ」
俺は彼と肩を並べて歩き出した。
お題「特別な存在」
3/23/2024, 11:54:43 AM