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『大地に寝転び雲が流れる…』

公園で寝転んで空を眺めていた。モコモコの綿のような雲。あれが水蒸気で霧なのだと知る前は、雲は布団の中に入ってるようなフカフカの綿のようなもので、その上を歩いたり出来ると思っていた。

どこもかしこもフワフワの木綿綿で、家も家具も、住人も、ぬいぐるみ のような人らで、転んでも殴り合っても枕投げくらいの打撃しかないので、ぬいぐる民達は楽しく平和に暮らしてましたとさ。

そんなある日の事、とある ぬいぐる民がいつものように寝転んで雲の端から地上を眺めていると、一人の人間と目が合いました。

…いや、合うわけ無い。遠すぎて顔なんて見えないはず。でも見える、向こうもびっくりしてるぞ。こっちに手を振っている。

ぬいぐる民は周りの綿から素早く糸を紡ぎだし、下界に向かって下ろし始めた。見られたからには生かして置けない。こっちに来て貰おう。こういう決まりなので悪く思わないで。

私達の事見える時点でもうこっちの住人なので文句あるまい。むしろ喜んでくれる。これが、芥川龍之介、『雲の糸』!って。人間よ、それ『蜘蛛の糸』だよ。少しは古典も読めよ。

5/4/2023, 12:10:37 PM