葉月

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「一年前」

 記憶というのは曖昧だ。歳をとってくると尚更その度合いは増してくる。例えば、昨日の夕食は何とか思いだせても、一昨日のこととなると皆目、思いだすことができない。「一年前」というテーマに接して、まずGoogleで一年前の六月十六日を検索し、その日が木曜日であった事がわかった。お天気は曇りで、梅雨時のことであるから、いまの様に雨が降ったり止んだり気持ちの晴れない日々の最中であった事は間違いがない。 
 いまもそうだけれど毎日の習慣で、ラジオを聴いていたはずだ。本箱の中を探したら昨年のテキストが残っていた。その日の内容は韓国の昔話で、私でもわかる簡単な英語での放送だった。雨蛙は雨が降るとなぜ鳴くのかという、梅雨の季節ならではの話で、テキストを読み返してみて、あぁ確かに聞いたと思うけれど、その放送が午後一時に終わり、その後どう過ごしていたのか、まるで思い出せない。
 毎月十五日に発売される雑誌があって、いつも主人が買って帰るのだけど、この雑誌の話を始めると長くなるから、ここでは割愛しよう。よほど気に入った号でないと手元に残さないから、我が家に二つある本箱の大きい方を探してみたが、案の定なかった。しかし雑誌を読みながら今日と同じ様にアイスコーヒーを飲んでいたに違いない。老人とは変わり映えのしない日常のなかで生きているし、昨年は今年よりずっとコロナが猛威を振るっていた。はてさて若い方はどの様に一年前を過ごしておられたのだろうか?自分のものが書き終わらぬ前に誰かの文章を心待ちにしている婆々である。
 夜も更けてきた。つらつらとどうでも良いことを書き連ねてしまった。我ながら陳腐な文章だと反省しきりである。

6/16/2023, 10:05:05 AM