今日は朝から暗い気分だった。
雨が降っているからではない。
そう今日は月イチのアレ,女の子の日の2日目だった。
「ねぇ,もう朝だよ。仕事でしょ?起きて。おはよう。」
いつもはこうやって優しく話しかけて起こしてたのに。
今はそんな気分になれなくて,
「ねぇ,朝起きて!!」
厳しい口調で彼を起こしてしまった。
お腹痛すぎて死にそう...。
死にはしないことは分かってるんだけどね。
痛み止め飲んでも,痛みがなくなっても
気持ちが天気が晴れる訳ではなくて
彼はいつも優しいから
「いつもありがとう。おはよう。今日は温かくしててね。行ってきます。」
声かけてくれる。
そんな声掛けに涙が出そうになる。
「ただいま。」
彼の声で目を覚ました。
「ごめん。起こしちゃったね。おはよう。」
ニコって笑いかけてくれる彼。
「ごめん。今日何もしてなかった。」
落ち込む私にそっと手を伸ばして
「大丈夫。」って
その優しさがなんだか私にはもったいないと思って。
「...ごめんなさい。ちょっと外に出てくる。」
お腹の痛みに気付かないふりをして走り出した。
雨が降っているのに傘を刺さない私は
ここにいるのは場違いだろう。
「ちょっと待って!!」
彼の声が聞こえる。
もう止まれないよ。
止まることなんて許されない。
冷たい雨は私の居場所はもうないと言っているようで
私の心に鋭く突き刺さって座り込んだ。
突然雨が止んだ。
「待っててって言ったじゃん。」
頭の上から声がした。
顔をあげると傘を差した彼がいた。
「なんで...。」
「なんでって心配だからじゃん。ほら早く帰るよ。」
彼は私に手を差し伸べて優しくキスをした。
「君のことだから,
つり合わないとか思っちゃったんでしょ。
そんなことないから。
俺,君のことだからこんなことしてるんだよ。」
彼はすごい。
私の居場所をすぐ作ってくれる。
私と彼をつつんだ雨は
さっき私を包んだ冷たい雨ではなくて
とっても温かく柔らかい雨だった。
─────『柔らかい雨』
11/6/2022, 12:56:00 PM